スキルアップ

「パラレルキャリア」柔軟で新しい働き方がもたらしてくれるもの

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大学院を卒業後、経営コンサルタントとして日本企業のM&A部門に携わり、社外から会社を改善していくプロとしての道を歩んだ齊藤さん。投資ファンドへ出向するのと並行して、震災をきっかけにNPOの活動をスタートさせました。組織開発、人材育成、ファシリテーションのより広い知識を得るため、東京大学大学院に進学し、2015年11月にご自身で合同会社を設立。日本企業やソーシャルセクターの発展のため、活動の幅を広げていく齊藤さんにお話をお伺いしました。

M&Aという手段で日本企業を活性化する

1番最初は、日系の経営コンサルティングの会社に入りました。もともと人的資源を効率的に活用することを支援する部署を希望したのですが、結果として最初の配属は、企業のM&Aをお手伝いする部署になりました。本当にこの買収・合併を進めて良いのかという査定を行ったり、バリュエーションと呼ばれる企業価値を見定めたりする業務です。あとは、統合のあとのPMIと言われる領域ですね。
担当は日本企業が多く、再生系の案件が多かったです。企業の業績が傾いている中で、てこ入れをしていきました。もともとは学生時代に途上国の研究をしていたので、経営自体の知識は皆無で、1から勉強し知識をキャッチアップする日々です。
こういったコンサルティング会社は、先ほど述べた様々なM&Aのプロセスの一部分に特化する場合が多いのですが、うちの会社は引き出しが多く、M&A後のバリューアップも含めて幅広くサポートできる部分に強みがありました。身近な先輩の立ち振る舞いから学び、日常の多くの時間を学習時間にあてていました。

M&A業務に携わる中、特に感じた日本企業の弱さは、M&Aのプロセスに慣れていないことや、M&Aは成長戦略の1つの手段でしかないのに、それありきの前提で考えてしまいがちなことですね。その結果、他の選択肢を客観的に分析できないという欠点がありました。ゆえに、客観的に見てM&Aではなく自力での成長戦略が良いという様な事を提示したりもしました。
また、企業を買収するときに、もともともっている価値よりも高い値段で買ってしまうという、「高値買い」が起きてしまうことなどもあります。その場合、買われる企業もその分バリューアップする必要があるし、買った方も期待外れになってしまいます。

今後、人口が減少し、日本の経済規模が縮小していく中で、日本企業の活性化に携われたことはとても大きなやりがいとなりました。
この時代に学んだ汎用的なスキルは、どんな場面でも活かせると思っています。周囲の先輩方の意識やレベルが高かったので、アウトプットの質を高めるマインドセットはたたき込まれましたね。トータルで6年間M&Aのコンサルティング会社に所属して、その後2年間投資ファンドの運営会社に出向しました。

援助なしで生きられない、途上国の実情を知った学生時代

「人」や「組織」という領域に興味を持つ様になったのは、学生時代の経験が影響しています。大学時代、ブータンという途上国の研究をしていたんです。ブータンは幸福度が高いことで世界的に有名なんですけど、国自体としてはまだまだ援助なしでは生きていけない国でした。教育費や医療費は無料なんですけど、それも結局他の国の援助ありきで成り立っていたので。
現地にはJICAのインターンとして3か月滞在したのですが、実際行ってみると「ブータン人は援助に慣れすぎている」「日本人の顔を見ると、お前は何をしてくれるんだ」と、平気で言う人が増えた、と現地で援助に関わっている方が言っていたのが耳に残っていますね。
人から施しを受けるということは、人の自尊心のためには良くないことだと思って。では援助という方法なしに国を支援する方法には何があるかを考えました。

その中で、民間セクターの発展がいかに大事かを思い知りました。民間セクターの発展に寄与するには、という発想から経営コンサルティングの道を志すことに繋がっていきました。国や企業の中で、人々が生き生きと働ける環境が整ったら良いな、と思ったんです。ヒューマンリソースの部分がいかに大事かを再確認した瞬間ですね。

ファシリテーションを活用し、内側から会社を改善する大切さ

コンサルティング会社に勤めて3年くらい経った時に、もちろん会社の発展のためにはM&Aはかなり有効な手段だと思っていたのですけど、果たしてそれだけで企業が本当に元気になるのかなと思いはじめたんです。

コンサルタントとしてプロジェクトを進めている際に、社外の勉強会で、対話などのファシリテーションを通じたコミュニケーションの改善によって会社の改善をはかる手法をとっていた方がいたんです。その内側の人々の関係性を向上していくのがすごく魅力的な手法だとその時感じました。

当時M&A以外の手法ももっと勉強したいとそこで感じたんですけど、まだM&Aのコンサルタントとして完璧に成長しきっていないのに、他の領域に移るのは逃げなんじゃないかと感じました。本当にやりたいことと、今の会社で学ぶべきこととの間で、しばらく悶々とした時間を過ごしていたのですが、そこで投資ファンドへの出向のお話をいただきました。
ファンドマネージャーとして、より現場に近い所で企業と関わることには魅力を感じたので、出向することに決めました。結果として、コンサルタントとしてのM&A支援だけでなく、ファンドマネージャーとして、投資先の買収や売却に取り組めたことで、M&Aのはじめから終わりまで一連のプロセスを経験できたことで、よい意味でM&Aの業界を卒業しようという気持ちに繋がりました。

また、丁度2011年に東日本大震災が起きて、あれだけの大きな被害に対して、自分の持っているコンサルタントとしてのスキルによって、何か手助けしたいと思うようになりました。そして、その気持ちからNPO法人GRAの活動に加わっていきました。コンサルティング会社はどうしても勤務時間が長くなりがちなので、NPOの活動や、ちょうど子どもが生まれたタイミングとも重なりますので、家族との時間を増やしたいなと感じ、投資ファンドの出向期間が終わるタイミングで、コンサルティング会社を退職しました。

最初に転職した会社で、ファシリテーションや場作りによって社会起業家を支援する活動をしました。組織が活性化しきれない状態にあっても、組織内のメンバーを簡単に入れ替えることはできないので、能力の有無にかかわらず、彼らに頑張ってもらうしかないわけです。
前の会社はプロフェッショナルの集まりではあったものの、多忙がゆえに社員同士がそれぞれをケアしきれていない部分があったなと感じています。もう少しお互いが協力的に努力できる環境がつくれたらな、と思ったときはありました。
長時間一緒にいるからと言って、互いに言いたいこと、言うべきことを言えているとは限らないですよね。日本の大企業は、年功序列や階層が強く根付いていて、下が上に物申すことを良しとしないですし。
こういった習慣が、日本全体の生産性を下げているのではないかと感じます。そういった部分に対して、外からの介入、ファシリテーションが必要となり、物事を進めていくことが効果的なのではないでしょうか。

「パラレルキャリア」柔軟で新しい働き方がもたらしてくれるもの

NPOで経験したプロボノ(本業の専門性を活かしたボランティア活動)に、活動自体の面白さや社会的意義を感じ、よりアカデミックに研究したいと思いました。人の成長に繋がることを証明し、ソーシャルセクターに人の流れを作れればいいなと。
そして今年の4月から東京大学大学院に進学し、中原淳先生の研究室に入りました。中原先生は成人教育をテーマとされていて、「大人の学びを科学する」というコンセプトに惹かれました。
私のように業務とNPO、学業といったパラレルキャリアをこなすことは、ひとつの業界や同一会社に縛られることなく、視野や価値観の幅を広げることができます。人脈も広がり、異なるセクターを経験することで大きな刺激を得ることもできますね。他の会社での方法論や価値観を学んで、自分の会社や業界に取り入れ、適応することが絶大な効果を生み出すことに気づくことができました。

また、今年の11月に合同会社あまね舎を設立しました。人材育成や組織開発といった、自分が軸としているものに近い活動をしています。固定的なメンバーで働くよりも、それぞれの分野のエキスパートを集めて、プロジェクトの内容に合わせて臨機応変に取り組むようなスタイルが今後増えていくのではないかなと思い、現在はひとりで活動しています。

組織開発とは、組織の中の人と人との関係性の質を良くすることで、より大きな価値を生み出し、ソフト面からハード面までを考えることだと捉えています。そのひとつの領域として、よく知られているのがファシリテーションやコーチング、対話といったものです。
今後は仕事と研究を組み合わせて、アカデミックな文脈も含め色々なセクターをつなげる橋渡しの役割ができるような人間になりたいです。
パラレルキャリアを取ることで組織の壁を越えながら、スキルや知識の習得により貪欲になってきました。そういった環境で自分の価値を相対化しながら、今後も向上心を高めていきたいですね。

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齊藤 光弘 (34)
経歴:

24歳 院卒で経営コンサルティング会社に入社 MA部門を担当

30歳 コンサルティング会社から投資ファンドの運営会社に出向
本業と並行して震災で被災した宮城県山元町の町作りを支援する
NPO
法人GRAの活動に参画

32歳 NPO/企業を場作りやファシリテーションを通じて支援する会社に転職 

34歳 4月、東京大学大学院に入学。ボランティアを通じた本業の能力強化に関する研究を開始
11
月、合同会社あまね舎(あまねや)設立。組織やチームメンバーの関係性向上を支援。


充実度

充実度: 85点

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