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企業規模や業種・職種が違っても必要とされる人材は全く同じ

全ての企業に平社員で入社し、これまでに上場企業やメガベンチャー等の役員を歴任、コンサルタントを経てITベンチャーの(株)ボールドで経営戦略を担う福井様に、業種を問わず求められる人材と仕事術の秘訣についてじっくりお話をうかがいました。

異業種間転職で経験の幅を広げてきた

私は光通信がまだ200人くらいだった頃の営業職に始まり、物流、学習塾チェーン、人材派遣、人材教育、通信、外食、とさまざまな業種を経験し、その後コンサルタントとしての独立期間を経て、2013年からITベンチャーの(株)ボールドで経営戦略を担っています。
これまでの転職において契機としているのは、その企業内で自分にしか果たせない役割をひと通り果たし、自分の知見や視点も企業の仕組みに埋め込み、次の世代も一定水準まで育ったと感じた時です。
メガベンチャーにおいては役員も若く、上が詰まることもありますので、自分が常務や平取まで行ってしまうと、下で頑張っている有望な若手を昇格させるもっとも簡単な方法は、自分が辞めて席を空けてやることだという事情もあります。
いささかきれい事にはなりますが。
また、一度きりの人生、ずっと一つの会社で働いてその分野で深くなっていくキャリアプランも素敵だと思いますが、たとえば20歳から60歳まで約40年間で4年ごとでも10社、5年ごとなら8社しか経験できないとは言え、自分としては経験の幅を広げていく方に興味がありました。
だから転職を重ねているのだと思います。
もっとも私は50で引退してその後やりたいことがあるので、ここが本当に最後になるかもしれません。
転職に際して迷うということはあまりありません。
やりきった感があったら退職を決意し、必ず完全に辞めてから次を探し、早ければ1ヵ月くらい、遅くても3か月から半年くらいでは必ず(やりがいのある)転職先を見つけてきました。
必ず未経験の異業種へ転職してきましたので、転職直後はすべての情報が自分にはまったく新しく、おもしろく感じられます。
また自分のことも誰も知らないので、初対面のときにどう思われる人間になっているか、転職のたびに(前回の転職時と比べて)定点観測できるのもおもしろい。
若い頃から、周囲から期待感をもって見られたい、期待値を上げたいという意識はありました。
期待値が上がれば自分への業務依頼が多くなり、成果がたくさん上げられます。
常に誰よりも必要とされたいという欲求が高い分、間違っても必要とされない人間とならないよう、自分の仕事にはかなり厳しい方だと思います。

現場の肌感なしに、経営戦略は描けない

後でお話しますが、企業の規模や業種が違っていても、極端にいえば文化や理念まで違っていても、必要とされる人材はほとんど同じです。
社長は皆、業績を伸ばしたいと思っているわけですから、そのためにそばにいて欲しい人材というのは共通するはずなのです。
そう考えると、ある会社で自分が評価を得られていないのに、転職したとしてうまくいく可能性は非常に低いと考えるべきでしょう。
求められるスキルやマインドセットにはそう変わりはありませんが、一方で現場は業種ごとに当然さまざまですから、僕は転職後は必ずイチから始めます。
最終的に常務取締役を務めたレインズインターナショナルでは、最初、牛角祐天寺店で皿を洗わせてもらいました。
皿洗いやホールを経験して、店舗の動線やバックヤードの実態までわかっていないと、最終的に店長と会話ができない、常務となって戦略を描こうというときに現場をリアルに想像できなければ正しい戦略は描けない、ということを確信しているからです。
どこの企業でも見かける光景ではありますが、異業種からいきなり役員・部課長で来る人は、リアルな現場を知らないから現場の人に声をかけてもリアリティがない、人の心に届かない、「これだったら頑張ろう」という気持ちを引き出せない。
よくあることです。
ビッグデータやマスマーケティングも重要ですが、それだけでは経営の正解は生まれません。
どの業種においても、現場感をもっているかどうかで見え方が違うはずです。
だから僕は転職時だけでなく、戦略を描く地位になってからも、出来る限り直接現場に行っています。
データからはわからない肌感のような部分を大事にしているのです。

社長が求める究極の6項目

さて、会社を伸ばしたいと本気で思っている社長が求めることは、業種・規模・歴史を問わず全ての企業において次の6つに集約されます。

この6項目以外に経営者が求めていることは一切ないはずなので、これらの項目に対して自分のアウトプットを最大化することがビジネスパーソンの使命であり、つまり成果の出し方は、業種が違うから違うということにはなりません。
では、実際にどうやって動くか。
1の理念については、率先垂範に尽きます。
自分が理念の体現者でなければならないということです。
理念を軸に行動している人だと思われれば、この人なら理念でジャッジをしてくれると周りも思うので、理不尽な目にあったり何かに疑問を感じている人間が、「自分の言っていることは正しいかどうか」と訊ねて来ます。
それに丁寧に応えてあげることで、理念浸透に幾ばくか成果が出せるというものです。
時々、理念なんてどうでもいい。
自分は自分のやりたい仕事をするためだけにここにいる、みたいな社員がいますが、それは大きな誤りです。
会社員として企業に存在している以上、法に触れない限り会社が全て正義であり、理念の実現に貢献する努力分まで給与に含まれていると考えるべきです。
会社員にとって最大の権利は「会社を選ぶ権利」です。
その権利があるにも関わらず、その企業を選んで所属しているということは、その会社の理念に納得しているということでなければなりません。
イヤなら辞めればよい。
今日もそこにいるからには、理念の実現は全力です。
2のCSに関しては、理念の体現をしていれば自然と顧客満足が上がる行動となるはずです。

徹底的にやりさえすれば、成果が出なかったことも成果である

3のESは5番の育成とリンクすることなのですが、従業員にとって最大の満足は「自分自身が成長を感じていること」です。
自分に力がついて、去年の自分より今の自分が確実に成長している、と思える環境を整え、やる気をもちあげ、成果を導く。
それがESにつながります。
人の上に立つ者は、すべからく人材育成を強烈に求められているということです。
6つの目的に対してトライアンドエラーを繰り返していれば成果は出ます。
ただそのトライアンドエラーのやり方が問題なのですが、単に結果だけではなく結果に行き着くであろう行動目標を定め、それに添って短サイクルで徹底的にやってみるのが大切です。
徹底的にやりきるから、その行動目標が正しかったか正しくなかったかが明確になるわけです。
高い結果を伴うと思って立てた行動目標にしたがって徹底的にやってみたけれど、結果が出なかった場合は、方向性ややり方自体が間違っていたということになりますし、やってみて成果が出れば、その方向で2倍3倍にできないか、と考えればよい。
その判断が出るまでの期間は短ければ短いほど良く、どうしたら短くできるかといえばいかに徹底的にやるか、ということに尽きます。
徹底的にやりさえすれば、成果が出ないということが判明したことそのものも成果である、そういう発想をもたせてあげる、そういう発想で先の6つの目的に向かわせさえすれば、あとは教えることはほとんどありません。
プロセスではなく結果を重視して評価しますが、最終的にこの結果に行き着くためにはこのプロセスが正しいか間違っているかを早く知る必要があるのです。
最終的に効果を出すための絶対的な手法と自信をつけるためには、プロセスを、つまりPDCAサイクルを速く回さなければいけないということです。
もちろんKPIは業種ごとに違いますが、KPIの数値を上げるための行動目標を正しく設定し、徹底的に行動量を上げることが大切なのは全ての業種で共通です。
中途半端な行動しかできなかったことで、もっと頑張ればできるんじゃないか、来月こそはやってみよう、を繰り返すことほど無意味なことはありません。
行動目標を設定する訓練は、セルフでもできます。
たとえば、100円のボールペンを今、5本売ってこいと言われたら、外へ飛び出してとりあえず売りに行くでしょう。
しかし5万本売れと言われたら、外へは行かず5万本売るための方法を幾つも考え出します。
5万本を本気で売ろうと思って出したアイディアのうち、5本売る時にも使えそうなものをやる。
それが、5本を最速で売るための方法であり、5本と言われているのに50本売れる成果につながるはずです。
つまり目標は高くないと、アイディアが貧困になるのです。
低めの目標設定にすると、頑張るしかないよ、ついつい労働提供だけで終わりになるよ、ということです。
サラリーマンなので所詮労働を提供することに変わりはありませんが、どうせ多くの時間を使って労働を提供するなら、大きな成果を上げたいと思いませんか。

自分が潜在的にもっている最大の能力を現出したいと思わせる、それが育成

4の利益の極大化は、理念に基づいてCSもESも上がっていれば、自然と伴ってくるはずです。
ただしコストに関しては、はじめからあまりに利益率や生産性にこだわっていたら経営改革はできないと思っています。
顧客の支持を得て売上げが上がるのがまず第一、その売上げを保ちながら、いかに効率性を上げてコストを下げるか、という順番で、まずは売上げありきです。
現場をあまり踏まない外からのコンサルの人たちは、自分の1年目の成果のために無駄を省いて人を切って不採算事業撤退・売却という手段をとって、取り急ぎ利益を出すことが得意ですし好きですが、こういう経営改革は本物ではありません。
異論はあるでしょうが、理念に基づきCSもESも上がって売上げそのものが伸びなければいけない、伸びたところでもう少し生産性、効率性を上げようというのが正しい流れだと、私は考えています。
5の人材育成が大事だというのは、結局一人の力でできることには限界があるからです。
どんなに優秀な人でも直接マネージメントで関われるのは30人くらいでしょう。
同じように優秀な人材を速く、多く、そして持続性をもって育成できる仕組みが必要なのです。
では自分と同じかそれ以上のマネージャーを育成するにはどうするか。
育成というのは教えることではなく、その人のやる気を上げ、やり方を一緒に考え、その人のもつ最大の能力を発揮させてあげることです。
持って生まれたポテンシャル以上のものを引き出すことはできないが、その人の人生において、私と出会わなかったらこうならなかった、と言わせることはできる。
だから私に関わった人たちには、自分自身が潜在的にもっている最大の能力を現出してみたい!と思わせる、そう思ってもらうことが私の使命ですし、そう思ってくれたら、もう成果は約束されたようなものです、それが私の「育成」です。
6の良いできごとが繰り返される仕組み作りというのは、こういうことです。
たとえば1億円のコストダウンというのも立派ですが、それがそのとき限りの成果ではなく、未来も再現されるような仕組みが作れれば、それを作った人の方が10倍えらい。
1人だけ何とか育成しました、ではなく、未来永劫何人も何十人もの優れた人材が育成され続ける制度が整った方がずっと素晴らしい。
自分が出した成果の汎用的な昇華、つまり自分がやった良いことが繰り返されるような仕組み・制度をいくつ会社に残せるか、僕は意図的に狙ってきました。
10年後に「この仕組みいいよね、誰が作ったの?」と言われるような仕組みを残したいという思いがあるからです。
優秀な人間は、多くの仕組みを会社に残す。
そして、もっと優秀な人たちがそれを単に継承するだけではなく、どんどん改善する。
それ以外に、企業が繁栄し続ける方法はないように思うのです。

プロフィール

福井 克明

福井 克明

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経歴:

18歳 光通信で営業職としてキャリアスタート

物流、学習塾チェーン、人材派遣、人材教育、通信、外食、とさまざまな業種を経験し、コンサルタントとしての独立期間を経て、2013年42歳からITベンチャーの(株)ボールドで経営戦略を担当

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